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東大教養学部第103回オルガン演奏会@駒場900番
ミッション系の大学ならば、オルガンが据えられることも多いでしょう。音楽大学ならばなおのこと、立派なものが備えられているはずです。しかし、国立大学の講堂にパイプオルガンが設置されているのはきわめて稀ではないでしょうか。
国立大学法人=東京大学駒場キャンパス。正門を入り左手にある900番教室に、その珍しいパイプオルガンが置かれています。900番教室といっても、別に駒場に教室が900もあるわけではなく、講堂につけられた教室番号。学部1,2年生(と教養学部3,4年、総合文化研究所・数理科学研究所)が通うこの地区で、最も大きな教室がここです。2階席の真ん中に、その存在をアピールするオルガン。「さすが東大、音大でもないのに税金でこんなものまで買っちゃって!」とご批判の目を向けられる方もおいででしょうが、さにあらず。このオルガンは廃棄寸前のところを助かった、そしていまでも危機に瀕した、楽器なのです。 そもそもこのオルガンは、吉祥寺のカトリック教会が所有していました。ところが近隣で火災が発生、消火活動のため水没の憂き目に遭ったのです。解体されようとしていたまさにそのとき、教養学部の教官が、これを引き取り、駒場に設置しようとしました。当時の森ビル社長、森泰吉郎の資金援助を受け、移転にかかります。ところがダメージは予想以上に深刻で、ほとんどの部品を新調することになり、予算を大幅に超えた出費が必要になりました。それにもかかわらず森は快く超過分も負担、1977年5月、晴れてお披露目となったのです。森泰吉郎の貢献は、安田善次郎による安田講堂の寄付に負けずとも劣らない貴重なものだと言えます。 以来年に数度の演奏会を始め、学外にも広く開かれ親しまれてきたパイプオルガンですが、その維持にかかる費用はかなりのものです。しかしそのすべてを国費で賄うことはできません。移転以来30年が経とうとしているこの楽器が、未来永劫安泰であるとはとてもいえない状況なのです。本日の曲目。
奏者は国立音大作曲科教授のトーマス・マイヤー=フィービヒ Thomas Meyer-Fiebig。ひげが素敵なドイツ人です。後方2階席に設置されたオルガン、而してわれわれ聴衆は奏者や楽器を尻目に、前方の黒板を黙々と眺めながら演奏を聴くことになるわけです。通例のオルガン演奏会では前方にスクリーンを立て、プロジェクタで奏者の姿を投影するのですが、今回は無し。「音楽は観るものではなく、聴くもの」という至極真っ当なマイヤー=フィービヒ氏の意見が反映されています。 演奏の詳しい内容についてはSonnenfleckさんにお任せします、と言おうとしたら、とっくにアップ済みではないですか。さすがお手が早くていらっしゃる(違)
by dubro
| 2005-05-26 23:59
| 音楽
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